本記事には、手術中の様子を写した写真(出血や切開箇所など)が含まれます。苦手な方や体調の優れない方は閲覧をお控えいただくか、十分にご注意ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療内容 | グラフトレスサイナスリフトを伴うインプラント埋入 |
| 年齢 | 60代 |
| 性別 | 女性 |
| 期間 | 3か月 |
| 費用(税込) | 533,500円/本 |
| リスク・副作用 | ・外科手術に伴う出血、腫れ、痛み、しびれが生じる可能性がある ・術後は定期的なメンテナンスが必要 ・骨の状態や全身疾患の有無によっては、抜歯即時インプラントが適応できない場合がある |
1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)
今回の患者さんは、以前から右側上顎のインプラント治療を検討されていた60代の女性です。
他院にてインプラント治療の下準備として、ソケットプリザベーション(骨を保存するための処置)がほどこされていました。しかし経過が思わしくなく感染を起こしたため、転院を検討されていました。
当院でインプラント治療を行なった患者さんからのご紹介により来院され、ご相談いただきました。長年お悩みであった部位であるため、再治療には慎重なご様子でしたが、前向きに取り組みたいというご希望をお持ちでした。
2. ご来院時の状態と診断
お口の中を診査したところ、右上顎のブリッジに動揺が認められ、土台となる歯の根が折れている「歯根破折」の状態でした。また、他院で行われたソケットプリザベーションの部位が感染を起こしており、早急な対応が望ましい状態と考えられました。
全体的な清掃状態は良好で、日頃から丁寧にお手入れをされていることが伺えました。しかし、歯の表面には「クラック(ひび)」や、歯の根元が削れる「くさび状欠損」が多数見受けられました。
これらは強い力が加わっている兆候であり、ご本人の自覚はありませんでしたが、食いしばりや歯ぎしりの習慣が強い可能性が示唆されました。
歯の根の部分が割れたり、ひびが入った状態を指します。特に神経のない歯や、強い咬合力がかかる歯に生じやすく、放置すると細菌感染を引き起こし、周囲の骨が吸収されることがあります。そのため、多くの場合で抜歯が検討されます。

3. 治療計画
当院では、インプラントを長持ちさせるために、まずはお口全体の環境を整えることを重視しています。特に今回の患者さんは咬合力(噛み合わせの力)が強いため、以下の手順で計画を立てました。
①精密検査と咬合力管理
歯周基本検査に加え、CT撮影や光学印象による資料採得を行いました。さらに、専用の検査機器を用いて咬合力の状態を確認し、過剰な力への対応として、噛む筋肉の働きを調整する治療「ボトックス治療」を優先して実施しました。
②治療プランの提示
データに基づき、治療期間と費用を明確にした複数のプランを提示いたしました。患者さんとじっくり相談し、ご納得いただいた上で最終的な治療方針を決定しました。
③低侵襲な術式の選択
通常、上顎の骨が薄い場合には「サイナスリフト」と呼ばれる骨造成を行い、骨補填材(失われた骨を補う材料)を用いて骨の再生を待つため、4〜6か月程度の治癒期間が必要となることが多いです。そのため、インプラントを埋入するまでに、1年近い期間がかかることもあります。しかし、今回の患者さんの場合は、体への負担を抑えつつ治療期間を短縮するために、骨補填材を使用しない「グラフトレスサイナスリフト」を選択しました。
小型カメラで口腔内をスキャンし、コンピュータ上で3Dデータを作成する型取りの方法です。従来の印象材を用いた方法と比較して、不快感が少ない点が特徴です。
【コラム】グラフトレスサイナスリフト
上顎の奥歯の上にある空洞(上顎洞)の粘膜を押し上げ、人工骨などの補填材を入れずにインプラントを埋入する技術です。体への負担が比較的少なく、手術回数や治療期間の軽減が期待できるのが特徴です。症例に応じて適応を慎重に判断することが重要です。
4. 治療時(手術当日)
手術は個室のオペ室にて、徹底した衛生管理のもとで実施しました。
①事前説明と準備
来院後、改めて手術内容の最終確認と同意書の確認を行い、口腔内清掃と麻酔を実施しました。
②抜歯・インプラント手術とグラフトレスサイナスリフト
大規模な骨造成を回避するグラフトレスサイナスリフトを採用し、抜歯・インプラント埋入と同時に行いました。従来の方法と比較して、治療期間の短縮が期待できます。

③術後確認
インプラント埋入後、その場でCT撮影を行い、計画通りの位置に正確に配置されているかを確認しました。その後、術後の注意事項を説明し、お薬を処方して終了しました。
5. 治療後・予後
今回の治療では、グラフトレスサイナスリフトと抜歯即時インプラント埋入(歯を抜くと同時にインプラントを埋入する処置)を組み合わせたことで、術後の腫れや痛みが比較的抑えられました。さらに、骨への侵襲を抑えた術式により、回復は順調に経過しています。


患者さんからは「もっと大変な手術になると思っていたけれど、想像以上にスムーズに感じた」とのお言葉をいただきました。事前のボトックス治療により過剰な噛み合わせの力もコントロールされており、現在の経過は良好です。違和感も少なく、日常生活への復帰も比較的早い傾向がみられます。
当院では、単に歯を補うだけでなく、その後の長期的な安定性に関わる咬合管理まで含めたトータルな治療を提案しています。「骨が足りない」と言われた方や、再治療でお悩みの方は、横浜・たまプラーザの歯医者 州デンタルオフィスまでぜひ一度ご相談ください。
監修:州デンタルオフィス
白土 州(院長 / 10studyClub 理事)
福岡歯科大学 卒業
九州歯科大学附属病院 口腔インプラント科
日本口腔インプラント学会会員
日本顕微鏡歯科学会会員

